にんじんβ

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タカハシの両親は、私たちが帰省するたびに大量の野菜を持たせてくれる。食べきるのに苦労するくらいの量だ。あまりの量にびっくりしている私に気がついたのか、最近は、野菜を詰める前にどれくらい要るのか声をかけてくれるようにもなった。


「大根は何本入れようかね」
「2本にしようかな」
「じゃあ、これは短いから4本入れておくよ」


「みかん食べるでしょう」
「うん、この袋に詰めていってもいい?」
「それは小さいからこっちの大きい袋にしなさい」


「にんじんはどれくらいにしようね」
「ありがとう、少しで大丈夫」
「少し? 20本くらいか」
「いやいやいや」
「なんだ30本か」


タカハシの両親は、私たちが遊びに行くと、いつも大量の野菜を持たせてくれる。私たちが食べきれないことも知っていて、量を控えめにもしてくれる。冒頭の写真は、そうして選りすぐられた野菜たちの中でもひときわの威容を誇っていたにんじんである。私たちは彼をにんじんβと名付け、その非凡な姿を称えたのち、カレーにして腹に収めた。