加賀で哲学を齧ってきた。<鈴木大拙館編>

(前回:西田幾多郎記念哲学館編
http://d.hatena.ne.jp/kubohashi/20121030/p1


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鈴木大拙館オフィシャルサイト
http://www.kanazawa-museum.jp/daisetz/


前回の「西田幾多郎記念哲学館編」で漢字変換できなかった「スズキダイセツ」は「鈴木大拙」と書くんですねえ。ということをgoogle先生にお伺いしてから向かいました、鈴木大拙館。


鈴木大拙は金沢出身の仏教学者です。
その著書の2割が英文で書かれており、日本の仏教思想や禅文化を海外に広く知らしめることに貢献。したそうです(一夜漬け)。


検索語の候補に「鈴木大拙 禅」「鈴木大拙 スティーブ・ジョブス」と出てきたのを見て何となく分かった気になってしまうあたりが検索の恐ろしいところですわいね。
しかしwikipediaの鈴木大拙の項

大拙が没した際、ニュースを読み上げた宿直明けのアナウンサーが、原稿に禅と書いてあるのを蝉と読み違えて「蝉の研究で有名な鈴木大拙氏が亡くなりました。著書には英文による『蝉と日本文化』…」と、誤って読み上げてしまい進退伺いを出すことになった。

と書いてあったので、大いに安堵。
よかった、よく知らないの私だけじゃなかったー。


◇◇◇◇◇


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西田幾多郎記念哲学館が哲学全体を扱っていたのに対し、こちらは鈴木大拙の思索をそのまま表現することにフォーカスした施設になっていました。
展示物に細かい説明なし。
自分で考えて感じろ、とでも言いたげな簡素さ。
私のようなよく知らない人間がポイッと入っても、中を歩いている間に思想を体感できるようなつくりです。


建物は、鈴木大拙の生誕地の近くに位置しています。駐車場が無いのでバスか自転車で行くのがよかろう。今回の旅行で我々が便利に使ったのは、「まちのり」というレンタサイクルのサービスでした。


まちのり
http://www.machi-nori.jp/


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ポートと呼ばれる自転車置き場(上記写真は兼六園のもの)が市内に点在していて、一度手続きをすればポートのどこでも自転車を借りたり返したりできるサービスです。利用料は1日200円。
30分以上連続して乗ると追加料金が発生しますが、30分以内に返してまた借りて、を繰り返せば、200円だけで乗り放題! 金沢市内の観光地は密集していて、30分以内に次のスポットに辿り着けるので、延長することはありませんでした。
車体はちょっと重いけど、ギア付きで坂道もらくちん。
タイヤの空気が入っている車体を選んで借りるとより幸せです。


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自転車のカゴに付いている地図がわかりやすくて大活躍でした。
(こちらでpdfをダウンロードできます→http://www.machi-nori.jp/pdf.html


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鈴木大拙館の最寄りのまちのりポートは13番になります。本多町のローソン前です。
閑静な住宅街を歩いて、館へ。


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着きましたー。
あれっ。この建物、どこかで見たことがある気がする……。


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(↑参考:東京国立博物館法隆寺宝物館)


似てるー!!


それもそのはず、両方とも谷口吉生氏の設計でした。
法隆寺宝物館の大ファンとしては俺得この上ない展開!


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鈴木大拙館は、「水鏡の庭」と呼ばれる人工池が敷地の半分近くを占めています。
水面に惹かれて、建物に入る前にお庭の方へふらふらと。


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遠くに先客が見える。私もその舳先みたいなところに立ちたい!
しかし順路が書いていないのでどうやったら行けるのか分からない!


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水面に浮かぶような庵。
あそこにも歩いている間に着けるのかしらと思いながら、とりあえず目の前の道を歩き進んで行きます。


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散策路って書いてあるけどこっちでいいのか……? と首を傾げつつ進む。


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入ってみたくなる小路を見つけたのでそのまま入る。
撮っているときには気がついていませんでしたが、標識を見る限り、この時点で私は鈴木大拙館の敷地から出てしまっておりますねえ。


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ずいぶん雰囲気が違うところに出たなー、とは思ったのですが、


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さきほどの先客さんたちに導かれるようにそのままずるずる進みます。道なりに来たはずなのに、さっき先客さんたちがいた舳先的スペースに出られなかった……なぜ……。


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……ここはどこだ。


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鯉がいる。


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川が流れている。


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和風建築が見える。
ここはどこだ!


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庭園の脇に唐突にこんな場所が出てきて大いに困惑。北陸放送……?


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北陸放送??


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ありのまま今起こったことを話すと、鈴木大拙館の前庭を散策していたと思ったらいつの間にか武家屋敷の庭園を歩いていたのでしたフシギー!


狐につままれた気持ちながら、行き止まりのようなのでとりあえず来た道を戻ることに。


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そうしたら行ってみたくなる坂道が目の前に現れたので、せっかくだから、と好奇心の赴くままに昇ってみると、


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なんだか立派な竹林に出て、


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更に進むと小高い盛り土の上に小さなほこらが見えるのでした。
どこだここはー!


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あとで知ったのですが、鈴木大拙館が建てられた際に周辺の小道が整備され、21世紀美術館や中村記念美術館などの周辺施設と行き来しやすくなっているとのこと。
もしもこのまま心の赴くままに道を進んでいたら、鈴木大拙館の中に入ることなく21世紀美術館に行ってしまっていたかもしれない。
幸い、というかなんというか、この日は持ち時間が限られていたため、このあたりで大人しく鈴木大拙館へ引き返して事なきを得ました。あぶなかったー。


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同じ道を戻ってきたつもりだったのですが、さっき辿り着かなかった舳先スペースにあっさり到着。あっれー?
これは私が方向音痴だからなのか、こういうつくりになっているのか。


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腑に落ちないままぼんやりしていたら波立つ水面。


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舳先的なところに立って右を見ると、さっきの庵っぽいところに団体客さんが。
距離があるので声は聞こえず、静かです。


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左を見ると、壁には何やら気になる穴が空いていて、


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奥には何やら気になる黒い石が。気になる……。


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そんなこんなでようやく入り口に戻ってきました。
長々書いてきたのに未だに建物に入っていない!
なんてこった。
ようやく受付を通ります。
私たちが行ったときは西田幾多郎記念哲学館との入館相互優待期間内でしたので、片方のチケットがあれば無料で入館できました。通常の入館料は大人ひとり300円です。


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スタンプがあるので、押します。
なぜならそこにスタンプがあるからです。
四角、三角、丸、は、鈴木大拙の書「△□不異○(色不異空)」によるもの。
(参照: google画像検索


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受付でペーパーファイルを貰います。
B5より一回り小さいかな、という大きさ。


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館内のあちこちに置かれているリーフレットを集めて、このファイルに収めてください、という趣向。リーフレットは英語と日本語の2種類で、鈴木大拙の言葉や展示物の解説が書かれていました。英語圏からのお客さん、多いんだろうなー。
「2012年10月」と表記されているものがあったので、時期ごとに差し替えられたりするのかもしれません。


館内の展示は撮影禁止だったため、写真なし。鈴木大拙の書や写真が置かれた展示空間と、著作と関連書籍をゆっくり座って読める学習空間がありました。
ハイデガーとの日独巨匠ツーショット写真が展示されていたようなのですが、まー見逃した。あっさり見逃してきましたネー。


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中庭の写真は撮ってもいいですよということでしたので、学習空間から遠慮がちに撮影。
さっき謎の穴から見えた謎の黒い石が目の前に。


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黒い石の正体は手水鉢でした。
まるさんかくしかくで構成されているあたりがニクい!


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学習空間を抜けると外部回廊に出ます。
何度も目にした庵っぽい建物がようやく目の前に。


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さっき楽しんだ舳先みたいな場所は池の向こう側に。
どこをどう歩いてきたのか全く把握していませんが、とにかくぐるっと回ってきたのだなあ。


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舳先から見えた波立つ水面、ふたたび。
数分間に一度、池の真ん中からあぶくがあがるようになっているそうです。


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ゆっくり広がる水紋。
この水紋が池の端まで広がりきって消えるまで、次のあぶくは上がってきませんでした。


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真四角の庵の中はこんなふうになっています。
畳が貼られた腰掛けは、座禅が組めるように幅広なつくり。


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天井の高さに、西田幾多郎記念哲学館のホワイエを思い出したり。
案内図には思索空間と書かれていました。
ゆっくりここに座ってリーフレットでも読みなさいよという場所なのでしょう。


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天井の小さな円い天窓を見上げたり、心ゆくまでのんびり座って、外へ。


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めいっぱい楽しませてもらった我々、無料でなんかすみませんという気持ちになったので、受付脇のミュージアムショップでTシャツを購入しました。1枚1500円。
正面に大きく鈴木大拙の書で「それはそれとして…」と書いてあります。
最高。
前回の西田幾多郎Tシャツと併せて、分かる人にしかわからない、分かった人もどう扱っていいか分からないであろう哲学系ペアルックがここに完成した!


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更に受付で周辺地図(http://www.kanazawa-museum.jp/daisetz/access.html)を頂き、すぐそこに氏の生誕地と記念碑があることを確認。早速向かってみると、徒歩で5分もしないうちに到着しました。


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鈴木先生西田幾多郎先生と雰囲気そっくりだなあ。


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台座には氏の書でシェイクスピアの一節、
"O wonderful, wonderful,
and most wonderful wonderful!
and yet again wonderful"
と書かれています。なんてチャーミングな文字なんだ!
鈴木大拙館にはこの書がプリントされたTシャツも売られており、「それはそれとして」バージョンと大いに迷ったものでした。


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記念碑の向かい側には、私立高校の遊学館が。
星稜高校・金沢高校と肩を並べる、高校野球の強豪校です。


しばらく校舎を見つめていたタカハシ、
「俺、今度から、石川県は遊学館を応援するんだ……」
と一言。そうだよねえ。高校野球の贔屓って、そういうよくわからない理由から入ったりするものだよねえ。


そんなこんなで石川県の哲学巡りは幕を閉じたのでした。
面白かったー!
この鈴木大拙館と、前回の西田幾多郎記念哲学館、哲学か建築に興味がある人しか訪れなそうなマニアックなスポットですが、入場料安すぎだろうと思うくらいに楽しかったです(そして維持費大丈夫だろうかとハラハラするくらいに立派な建物だった……)。哲学者を扱いながらこうも違う建物になるかー、と見比べるのが最高面白いので、ハシゴをおすすめいたします。


◇◇◇◇◇


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