加賀で哲学を齧ってきた。<西田幾多郎記念哲学館編>

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石川県西田幾多郎記念哲学館オフィシャルサイト
http://www.nishidatetsugakukan.org/index.htm


「石川県に行くことがあったら、『ニシダキタロウ』の記念館に行きたいんだよねえ」とタカハシが言ったのは数年前。
それを聞いた窪橋の脳裏に浮かんだものを絵にするとこういうことになります。


img019キタロウ。


時は流れてこんな私も『西田幾多郎』を正しく漢字変換できるようになり、今月、晴れて石川県に遊びに行くことになりました。己の無知をカバーするべく下調べをしていたら、オフィシャルサイトのFAQにこんな箇所を見つけて大いに安堵。

Q.西田幾多郎と西田幾太郎のどちらが正しいのですか?
A.よく間違えられますが、西田幾多郎が正しいです。(後略)

Q.幾多郎のよみ方は「キタロウ」と「イクタロウ」のどちらが正しいのですか?
A.「イクタロウ」とよまれる方もいらっしゃいますが、「キタロウ」が正しいです。

よかった、わかってないの私だけじゃなかったー。
わかってなくても行っていいんだー。


◇◇◇◇◇


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「ニシダキタロウの記念館」とタカハシが呼んだ施設は、正式名称を「石川県西田幾多郎記念哲学館」といいます。西田幾多郎氏の生誕地である石川県かほく市に建っている、とても立派なたてものです。開けた小高い丘にどどーんと建っている。どどーん。設計は、どどーんと大胆なコンクリートの建造物を沢山つくられている安藤忠雄氏。どどーん。


アクセスはちょっと悪くて、旅行者が行くなら金沢駅から電車で25分+徒歩約20分、あるいは金沢市内から車で20分ほど、ということになると思います(→参照)。私たちはレンタカーで訪れたのですが、オフィシャルサイトに載っている手書き地図(参照)を見たら、駅から歩いてみたかったなあという気持ちに……。この地図、すんばらしくかわいい! おかしまるよに行ってみたいよ!!


駐車場は全部で2カ所。哲学の杜と呼ばれる前庭の前にひとつ、建物のすぐ脇にもうひとつあります。哲学の杜の「思索の道」を歩くと楽しいと聞いた我々は、前庭前で下車することにしました。


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車を降りると目の前にこれが。かほく市の願いは力強いなー。


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駐車場脇のまるさんかくしかくの組合わせで出来たような建物は、お手洗いでした。
のっけから個性的だ!


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お手洗いのすぐ脇に、「思索の道」の入り口があります。
うねうね歩きながら思索にふけるといいよという趣向のお庭です。


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一本道を歩いていくと行き止まりになってしまって、


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あっれーと思いながら行き止まりに近づくと、つづらに折れた道が現れるという。
おおお面白い。


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私たちが行ったときは、紅葉が始まりかけた頃でした。
もう少ししたらこの道全体が真っ赤になるのだろうなあ。


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道の脇に大きなクモを見つけ、夢中で写真を撮るなど。
そう、今回、私は、買ったばかりのレンズを装着しているのですよ……!
性能を試すのが嬉しくて仕方ないのですよ!!


しかし、私たちが館に到着したのは既に16時近く。
閉館時刻の17時半まで時間が無い!


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こうしてはおれぬと焦ったら、明らかに正面入り口じゃないところに出ました。
クモに夢中になって標識を見逃したようです。迫り来る夕暮れ。


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あわあわうろうろしていたら、いつのまにか入り口に到着していました。


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この哲学館は、一部が展示棟と呼ばれる有料施設(一般500円)、その他が研修棟と呼ばれる公民館的な機能を持った施設になっています。研修棟だけなら入場無料で楽しめます。


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無料施設としては例えば図書室があります。


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建物が曲がっているなら部屋も曲がってていいだろう、とでも言いたげな力強さ!


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扉には西田幾多郎の言葉が掛かっていたりする。


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やはりというかもちろんというか、哲学書中心の品揃えです。
(参考:西田幾多郎記念哲学館へ行ってきた - Togetter
かほく市で働いている人、石川県在学・在住の人には貸し出し可能とのこと。
椅子と机があるので、この場でゆっくり閲覧もできます。


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さて、受付で入場料を支払って、展示棟へ。
受付横の細い回廊が展示室へ続いています。


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回廊脇の中庭には「吾只和唱」の手水鉢。


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中庭から空を見上げる。雪が降っているところも見てみたいなあ。


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展示棟は3階建てで、1階部分が哲学史の概要のインタラクティブな展示、2階が西田哲学と西田氏に関する資料、3階が西田氏の書、というような構成になっていました。


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透明アクリル板や鏡を多用していて、とても視覚的。


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iPadを使った展示では、デカルト先生が「何のために生きるのか」を身振り手振りで熱心に教えてくれたりします。すごいや! このアプリ販売してくれたらいいのに!


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映像を映す眼鏡とヘッドホンが合体した、なんか凄そうな展示。残念ながら故障中でした。試しに覗いてみたら、エラー画面っぽいwindowsの映像が……切ない……。


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二階に行くと、西田幾多郎の処女作「善の研究」の初版本があったり、
(参考:図書カード:『善の研究』-青空文庫


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その他希少本と共に、西田哲学のキーワードをパネルでおさらいできるようになっています。この辺になると分かっている人にしか分からない内容なので、私などは、図解の中の細長いヒトの絵がトリみたいでいいなあとか思っていました。


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展示物の中で一番衝撃的だったのが、これ。地元の名士ともなると家系図が張り出されたりするんだなあ! 掲載されている一番お若いかたは平成生まれだったけど、頻繁に更新するものなんだろうか。


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順路が良く分からなくて、3階の展示を見逃したまま外に出てしまいました。
あとから気がついた。残念。


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屋外には、移築された西田幾多郎の書斎、「骨清窟」があります。


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理想の書斎を形にしたらこうなりましたー、みたいな夢のような部屋。いいなあ。


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ちなみにこの骨清窟、入ることができなかったのでガラス窓から中を覗いて見学しました。傍目には不審者そのものだ。


このへんで歩き疲れたので、喫茶室に移動しました。


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エレベーターホールには、公民館っぽく自治体の様々なポスターが。中でも信長のインパクトが凄かった! これを見たタカハシは「一向宗のお膝元でなんて過激な……世の中は変わるものだな……」などと唸っていましたが、一体いつの時代から来たつもりだね君は。


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喫茶室は見晴らしの良い2階にあります。脇の扉から外に出ると、市街が眼下に。
すっかり夕暮れたなー。


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ちょっと冷えたので昆布茶をいただきました。ドリンクメニューはすべて300円。
奥に見えるのは絵本の本棚で、こちらも貸し出し可能なようです。


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お茶をすすりながら絵本をめくり、カウンター横の置物にほっと一息つくなど。
おばあちゃんちにあったわ、こういうの。
重厚な建物の中身は、憩いの場として機能しているんだなあ。


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一服して元気になったので、この建物を象徴するスペース、ホワイエへ向かいます。
ホワイエの外側に巻き付いた階段で1階へ。


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ホワイエは、この建物を縦に貫く、コンクリートの壁に囲まれた吹き抜けの円い空間です。


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中央の椅子に座って見上げると、大きな円い天窓から空が見える。


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ここはパンフレットの説明によると「瞑想の空間」なんだそうですが、ギャラリーとして貸し出してもいて、私たちが訪れた時は介護川柳の応募作品が壁一面に展示されていました。介護の悲喜こもごもが詠み込まれた五七五に囲まれた私は心が乱れまくって、瞑想どころではなかった……。だってさあ、一つひとつが胸に迫るんだもんよう。(写真は動揺して落ち着かない窪橋)


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それにしても、どこをどう撮っても絵になる建物です。
座ってみたり見る角度を変えたり、時間めいっぱい遊びました。


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すっかり楽しんだのち、受付に戻ってオリジナルグッズを物色。黒いTシャツ(1500円、各サイズ有)を買いました。谷川俊太郎さんとお揃いだーとニヤニヤできる一品です。ニヤニヤ。*1


お会計中、受付の方とタカハシが少しやりとり。
「当館のチケットで、今なら金沢市内にあるスズキダイセツ館が無料になります*2ので、行ってみてはいかがでしょう」
「そういえばスズキダイセツも石川の人でしたね。記念館があるんですかあ」


タカハシは嬉しそうに話を聞いている。
例によって窪橋は人名を漢字変換できていない!
大丈夫か、窪橋!


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つづく!


(続き:鈴木大拙館編
http://d.hatena.ne.jp/kubohashi/20121230/p1


◇◇◇◇◇


西田幾多郎の思想 (講談社学術文庫)

西田幾多郎の思想 (講談社学術文庫)

善の研究 <全注釈> (講談社学術文庫)

善の研究 <全注釈> (講談社学術文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

*1:http://www.1101.com/poe_T/08.html

*2:西田幾多郎記念哲学館と鈴木大拙館、どちらかの入館券の半券でもう一方の館に入館できる入館相互優待を実施中。平成24年11月11日まで。急げ!