散歩中の犬橋は正面顔を見せようとしない
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ぐったりするほど暑い日でも、散歩となると犬橋は俄然勢いづく。外出用のリードを人間が手にしたら、出発の合図だ。伸びをして、頭をぶるんぶるん振ってスタンバイ。
動きすぎてリードがつけにくい。
リードをつけるために首を押さえつけられたのが不満気な犬橋。
さあ出発。
犬橋はぐいぐい引っ張って歩くことが(あまり)ない良い子なのだが、リードの許す限り、行ったり来たり好き勝手に動く。
で、紐が体に絡まったりする。
本人は気にしないでざくざく歩く。見ているこっちが気持ち悪いので、強引に引き止めて直す。
引きとめられている間もずっと、犬橋は何かを嗅いでいる。
散歩中の犬橋は地面を嗅ぎながら歩く。
とにかく嗅ぐ。
嗅ぐ。
嗅ぐ。
嗅ぐ。
◆
散歩中の犬橋は、力強く、わしわしと歩く。
足に力が入っているせいで、写真だと止まっているように見える。
地面を掴むみたいに、ぐいぐい歩く。
歩く。
歩く。
◆
夢中で歩く犬橋は、カラスよけの手袋なんか気にしない。
わしわし歩く犬橋は、公園のシマウマなんか気にしない。
「公園でみんなと遊ばないの?」
「怖い犬に吠えられたことがあるから嫌なんだってさ」
犬橋は、前の日と同じところを嗅ぎながらわしわしと歩き、
道を渡り、
橋を越え、
猫を見つけたら追いかけて、
いなくなったのを見届けてから、
行き過ぎた道を戻って、
戻って、
うちへ帰る。
(おしまい。)
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