初蚊の日2010


伊勢☆エビー!!!


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3月最後の連休をつかって、伊勢へ2泊3日の家族旅行に行った。全員揃っての家族旅行は久しぶりだ。前はいつだっただろう、小学校以来ってことはないと思うのだが、いやそうかも、それくらい久しぶりだ。前と違うのは、今回からタカハシも参加したところ。


今まで男一人だったところに、息子、が、増えて、ついでに車の運転ができる人員が増えて、父はよっぽど嬉しかったみたいだ。そのメリットを最大限に生かすべく、「伊勢まで車で行く」と宣言した。タカハシと交代で運転するというのである。東京から伊勢は遠い。車で行けないことはないが、遠い。女どもは反対した。週末ドライバーが無理するな、電車のほうが楽だろう、向こうでレンタカーを借りればいいじゃないか、と説得した。母と娘の意見にいつもニコニコと従う父はしかし、今回はなぜか頑なに、車での移動を主張し通したのだった。


タカハシは終始一貫無抵抗だった。「まあ、なんとかなるんじゃないの?」と言い、それどころか宿の手配を一手に引き受ける程の働きを見せ、父はますます浮き足立ち、お手製の旅のしおりまで作った。遠足前の中学生か。


早朝からの長距離移動に備え、私とタカハシは前日から実家に泊まりこむことにした。布団は祖父母が使っていた部屋に敷いた。私が使っていた部屋は物置になっていて、寝る隙間がないからだ。乗り慣れてない車だからなあ、とタカハシはひとりごちた。たくさん寝て、運転に備えないとなあ。呟きながら、二人ともいつの間にか寝ていた。翌朝、3時に早起きをして支度、顔を洗ってコンタクトを入れ鏡を見ると、右の目頭の脇に、一目でそれとわかる特徴的な腫れ。これは……蚊だ!


「すばらしい。」とタカハシはうなった。「なぜこのタイミングで。」
母も絶賛した。「昔からこの子はこういうところがあるのよ。」
タカハシと母は、私がいかに手がかかる人間か語り合っているうちに、すっかり仲良しになったのだ。腹立たしい。


私は化粧もそこそこにして、腫れた部分に軟膏を分厚く塗った。数時間車に籠もりっきりなのだし、人に会わないからいいだろう、とばかりに分厚く塗ってやった。どうだ変な顔だろう。タカハシと父が運転しているあいだ、私は助手席で、後部座席で、のんびりだらだらと過ごし、目的地が近づいて運転手二人がぐったりしはじめたころ、腫れは目立たなくなっていた。