【写真・アンコール遺跡】ニャック・ポアン
ニャック・ポアン寺院 Neak Pean
- 12世紀末
- ジャヤヴァルマン7世
- 平地型
- 仏教(観世音菩薩)
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アンコール遺跡旅行を書くためにブログを立ち上げて早10ヶ月、未だに遺跡の記事を書いていませんでした。のんびり更新がモットーとはいえのんびりすぎる。我ながらびっくりだ。
最初に取り上げるのは、独特な造りが印象的な遺跡、ニャック・ポアンです。ワットやバイヨンの威厳に満ちた姿と比べると、優しい雰囲気の寺院です。「かわいい」って言ったら語弊があるかなあ。
ニャックポアンに向かう参道。のどかです。道の脇に牛が繋がれていました。ニワトリは基本放し飼い。ひよこも走り回っています。
牛は普通の牛と水牛とがいて、遺跡のまわりでよく見かけました。主に役畜として飼育されているようす。あっくん*1は、子供のころ西バライの近くの原っぱで放牧してたって言ってたなあ。大型農機具は見かけませんでした。ヤンマーのトラクターと稲刈り機のCM、ホテルのテレビで流れていたんだけどな。
なんの話でしたっけ。ああ遺跡の話でした。
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ちょうどいい地図がネット上にないので、自分で書いてみました。む、むむ、難しかった。メレ子さん尊敬。アンコールワットみたいな複雑な遺跡の時はどうしよう…その時に考えよう…うう…。
ニャック・ポアンは、正方形の大きな池と、東西南北を取り囲む小さな4つの池でできています。大きな池の真ん中に、丸い祠堂がひとつ。そのお堂の入り口に向かって、神馬ヴァラーハの彫像があります。側面に浮き彫られているのは、馬にしがみつく人々です。
『ジャータカ物語、シンハラの話』
菩薩さま大好き大好きシンハラさん。ある日シンハラさんは仲間と一緒に難破してしまいました。着いたところは鬼の島。人食い女がいるよ怖いよー。そこに颯爽と現れたヴァラーハさん! 姿は天を駆ける神馬、しかしてその正体は菩薩さま! シンハラさん達はヴァラーハさんにしがみつきます。助かりたければ、向こう岸にたどり着くまで、目を開けてはなりませんよ。シンハラさんはちゃんと目をつぶっていたので助かりました。めでたしめでたし。
水の上を走る神馬の向かう先、池に浮かぶ島のようなお堂では、2体の大蛇が神馬たちを迎えます。水を司る多頭の蛇神、ナーガです。
カンボジアは今も昔も水の国、稲の民です。アンコール時代、水を治めることは神の業であり、為政者の重要課題でもありました。遺跡には人工池が多数あります。かつてはここにも「ジャヤタターカ」と呼ばれる大きな池(長さ3.5km、幅900m)がありました。ニャック・ポアンは、その池の真ん中に作られた、一辺350mの正方形の人工の島だったそうです。治水を願う聖地です。
「ニャック・ポアン」の意味は、「絡み合う大蛇」。ナーガの体躯が中央祠堂の基底部をぐるっと囲んでいて、お堂全体が蛇のとぐろのような姿をしています。写真だとわかりにくいですね。こんな感じです↓
雨期になって真ん中の大きな池に水が溜まると、小さな池につながる4つの祠(地図に点線で記したところ)を通って水が流れ出る仕組みです。どうです、このわくわくシステム。
池を囲む歩道にぽこっと突き出たドームが、祠の天井にあたる部分です。
小さな池の方に回り込んで、祠に入ってみましょうか。
小池の水は乾いていました。
入り口の高さは2mくらい。ちいさな入り口です。屋根のあたりに装飾が残っていますね。
祠の中に入ると、正面にはゾウさんが!
口に穴が開いているのがわかりますか?
ここが樋になっていて、中央の大池から水が流れてくる仕掛けなんだそうですよ。
どうですか! なんですか、もう!
金色の飾りは、地元の方がお供えしたものです。右下に置いてあるのはお線香。火薬部分が黄色で、持ち手は赤く着色されています。カンボジアでよく見るタイプのお線香です。
樋口は方角ごとに違うデザインで、
西の祠はウマ、
南は獅子、
東はヒトの頭部を象った樋口が設置されています。
涼やかなお顔立ちの御仁ですが、
モデルはジャヤヴァルマン7世なのかしら。
素朴に見える内壁も、よく見ると細かい彫り物がびっしり。
傍らには、ヨニ(女性器の象徴)が置いてあったり、
ちいさな仏足石があったりします。この仏足石かわいいなぁ…。
さりげなく供えられた、船の形の供物。遺跡は今でも、地元の人たちの信仰の場所です。